2022年02月22日
私が新人時代に言われてうれしかったコトバ
「昔はパワハラなんて当たり前だった」と言われます。
ミスした部下にたいし、上司がモノをなげつけて怒鳴ったり、ひどい暴言をはいたり。
そんなことは「日常の一部」として語られてきました。
ですが、それも今はむかし。
「パワハラ防止法」なる法律も施行され、「パワハラ、ダメ、ぜったい」の世の中です。
この記事を書いている30代の私が新卒のころはすでに、上司の8割は「パワハラNG」をたたき込まれ、日ごろから“当たり障りのない”言葉づかいをしていたように記憶しています。
一方、上司の2割は「パワハラNG」の風潮を受け入れられないようでした。
「こんなのはパワハラのうちには入らない。昔はもっとひどかった」と、部下を人前で怒鳴ったり、真夜中の2時に電話をかけて指導したり、ということがあったのも事実です。
ただ、上司のふるまいがどうであれ、「そこに愛があるかどうか」だけは、新入社員の私にも、不思議とわかったものです。
一見、やさしそうな物言いだけど、なんだか冷たい。
逆に、怒鳴られているはずなのに、きちんと育てようとしてくれるのが分かるので、まったく嫌みを感じないということもありました。
大切なのは、上司と部下の関係性。
そして、何がそれを規定するかといえば、やはり「その上司がどんなコトバをえらび、部下に伝えたか」だったと思うのです。
そこで今回は、私が自分の新人時代をふり返り、救われた上司のひと言を紹介します。
そこに愛情を感じ、モチベーションが下がるどころか、上がったコトバが、たしかにあったなと思うのです。
「あなたのために、正直に伝えるね」
上司として、部下に厳しいことを言わなければならない場面は、かならずやってくるもの。
でも、感情にまかせて怒るのは、得策ではありません。
かといって、言いたいことをオブラートにつつみすぎても、伝えたいことが伝わりません。
そんな場面では、
と前置きしてみましょう。
このコトバには、「怒っているけど、それはあなたを応援しているからですよ」というニュアンスがこめられています。
実際に、私が新入社員だったころ、上司からこう言われて、ピッと背中がまっすぐになったのを覚えています。
「一度くらいの失敗でくじける人じゃないと信じてるよ」
「みんな最初は失敗するものさ。だれにでも失敗はつきものだから」
というコトバをよく聞きますが、新入社員にとっては、あまりなぐさめになりません。
なぜなら、そんなに達観できる余裕がないからです。
新人だったころの私は「そう言われても……」と腑に落ちない気持ちでした。
それに、なんだか突き放された感じがして、ただ「すみません」と言うしかなかったのを覚えています。
ですが、同じような場面で、唯一、響いたコトバがあります。
これです。
特に、「信じてるよ」というコトバが、ミソ。
「上司をがっかりさせたくない!このままじゃダメだ!」と、力が自然にわいてくるパワーワードです。
「自分も、そういうときがある」
仕事でミスをしてしまったとき。
得意先に迷惑をかけ、そのうえ上司にも叱られたら、新入社員でなくとも多少はヘコみます。
そんなとき、あなたは周りから、どんなコトバをかけられたいですか。
「そんなに気にしなくていいんじゃない?」
そう言われることもあるでしょう。
気持ちはありがたいのですが、でも、これでは正直、なぐさめになりません。
気にしたくなくても、気になるのです。
何しろ、自分のせいで人様に迷惑をかけてしまったのですから。
私が年の2つ上の先輩社員から言われて救われたのが、このコトバでした。
孤立感が、いっきに安心感にかわる瞬間。
先輩社員への信頼がたかまり、前向きな気持ちになったのは言うまでもありません。
「頑張ってないと、悩めないから」
失敗して落ち込んでいる人をなぐさめるとき、「いつまでウジウジしてるんだ」と伝える人がいます。
これも相手との関係性によりますが、「ウジウジ」自体がネガティブな語感をふくむので、一般的には、あまりおすすめできません。
逆に、
などと言われると、救われる人もいるはずです。
部下は「(上司が)日ごろの頑張りを見てくれている」と知り、上司への信頼感をたかめるでしょう。
それだけでなく、「やってきたことはムダではなかった」と、仕事に前向きな気持ちになるに違いありません。
大事なのは部下への愛情
上司のさりげない日々のコトバがけが、部下の気持ちを左右します。
どうせ伝えるなら、愛情をもって。
そして、その愛情が、伝わる伝え方をえらびましょう。
ぜひ、実生活で取り入れてみてください。
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「伝え方研究所」編集部
すぎなおき新聞社で首相の番記者などを経験したのち、伝え方研究所の立ち上げにジョイン。研究所がめざすコミュニケーション力のベースアップを支援している。趣味は、スナップ旅。
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