2024年01月09日
【コトバの効率的な学習法】発見!異文化コミュニケーション#008
こんにちは!
オーストラリアで生活している、
伝え方研究所の杉です。
この連載では、海外でみつけた
伝え方や文化のちがいをつづっています。
今回のテーマは、
コトバの効率的な学習法について。
ずっと英語を勉強しつづけている
私と同じように、英語の勉強に苦戦している
フランス人やブラジル人、タイ人など
「非英語圏」の学習者をみていて
気づいたことがあります。
勉強に同じ時間をかけているのに、
いつまでも初級レベルを
ウロウロしている人がいる。
そのいっぽうで、新幹線並みのスピードで、
ぐんぐん上達する人がいるという事実です。
この違いって、なんなのでしょう?
スピーキング時間の違い、
ネイティブの友だちが多いかどうか、
性格が社交的かどうか——。
かようにいろんな要因はありますが、
3か月で英語学校の最高クラスにたどりつき、
「日本生まれの日本人として非常にめずらしい」
と先生にほめられた私にとって、
いちばん効果があったと感じたのは、
「翻訳しない脳回路」をたたきこむ意識でした。
この「脳回路」を意識する前と、意識した後では、
英語が身につく速度が
圧倒的に変わった体感があります。
では、「翻訳しない脳回路」とは、
いったいなんでしょう?
平たく言えば、
「いちいち日本語から考えない」
ということです。
たとえば、初対面の相手に
と英語で尋ねたいとします。
というコトバが頭にスッと浮かんできた人も
多いと思いますが、そういう方は
英語でなんて言うんだろう・・・・・・?」
とは、考えなかったはずです。
「機嫌」をむりやり英語にすると、
たとえば「mood」というコトバが
あるそうですが、
『What’s your mood?』かな?」
のように、いちいち日本語から
考えていると時間もかかるし、
ネイティブがその場面ではあまり口にしない
ぎこちない表現になってしまい、
「良いことなし」なのです。
のように、英語には、英語らしいテンプレがあり、
それをいちいち日本語から組みたてようとせず
まるっと暗記してしまったほうが、
よほど効率が良いということなのです。
これが「翻訳しない脳回路」です。
きっかけは日本語勉強中のオージーとの出会い
「翻訳しない脳回路」
が効果的だということに気づいたのは、
日本語を勉強しているオーストラリア人との
出会いがきっかけでした。
彼は、日本語をとても流ちょうに話します。
あまりに流ちょうなので、
「きっと10年くらい勉強しているんだろう」
と思って尋ねてみると、
衝撃の答えが返ってきました。
「6か月しか勉強していないよ」
というのです。
「え、たった6か月!?そんなこと、あり得るの!?」
私は、イスから転げ落ちそうになりました。
が、かろうじてイスの座面の縁をつかんで
持ちこたえた私が即座に気になったのは、
「彼がどうやって勉強したか」です。
いわく、
まったくちがう」
別物だと思って取り組んだ方が、
結果として早い」
というのです。
彼がそう思うようになったきっかけを与えた、
ある日本語があったといいます。
それが
というコトバ。
日本人にとってはなんてことのない、
ありふれた表現ですが、英語話者にとって、
「非常にアタマを悩ませる表現」らしいのです。
理由は、このコトバが意味する内容は
場面によって変わり、それぞれに対応する
別々の英語表現があるからだというのですね。
たとえば、仕事で
とっても良い成績を残した同僚に
と言いたいときは、
がもっとも自然。
ですが、1日のはじめに社内で同僚に会って
というときに、
というと「は!?」と怪訝な顔を
されてしまうというんですね。
こういうときの「おつかれさまです」は
とか
がもっとも近いのです。
また、仕事終わりに居酒屋へ行き、
乾杯するときにも日本人は
と言ったりしますが、やはりここでも
というのもおかしければ、
もヘンなのです。
こういうときの「おつかれさまー!」は
が、いちばん自然なのですね。
このように、英語と日本語はかなり違う。
いちいち母語を介して考えていると、
その間にも周りの会話が進んでしまい、
話についていけなくなってしまいます。
そこで彼がたどりついた結論が、
「いちいち翻訳しない脳回路」
だったのです。
「翻訳しない脳回路」を意識した勉強法
さて、ここからが本題なのですが、
「翻訳しない脳回路」をたたきこみ、
その言語のテンプレを
身につけるよう意識すると、
その後の学習がとっても効率的になります。
たとえば、相手の年齢を尋ねたいとき、
あなたは英語でなんと聞きますか?
ですね。きっと口からスッと出てくる人が
多いと思いますが、これも冒頭の
「How are you?」
と同じで、テンプレ表現として覚えているので、
英語で『age』だから・・・・・・
『What’s your age?』かな・・・」
とか考えることなく、
口からスッと出てくるわけです。
では、応用問題です。
相手の身長を尋ねたいときは、
なんと言うでしょうか?
「『身長』という単語は英語で・・・・・・」
というふうに考えなくても、
簡単に尋ねる方法があります。
が、正解です。
さっきは「old」だった部分が、
「tall」に変わっただけですね。
「old」も「tall」も同じ「形容詞」なので、
入れ替え可能なのです。
ほかにも、
(どのくらいお腹減ってる?)
(どのくらい疲れてる?)
(どのくらい具合悪いの?)
のように、「old」が入っていた形容詞の部分を、
別の形容詞に入れかえるだけで、
一気に質問の幅がひろがります。
「How old are you?」
というテンプレ表現をひとつ知っているだけで、
いろいろと応用することができるんですね。
これが、「翻訳しない脳回路」が、
私にとって効率的だった最大の理由です。
ほかの言語にも応用できる!
ちなみに、この「翻訳しない脳回路」が
日本語を学んでいるオージーからの
受け売りであることは
すでに伝えたところですが、
彼は日本語でそれを実践しているのです。
たとえば
という表現をテンプレとして覚えてから、
「住所をここに書いてもらってもいいですか」
「住所をそこに書いてもらってもいいですか」
というように、一部を入れ替えることで
表現の幅を広げているそうです。
いちから翻訳するよりも、
ずいぶん効率的ですよね。
おわりに
さて、今回はコトバの効率的な
学習法をご紹介しました。
今回は、英語について話しましたが、
日本語をはじめ、ほかの言語についても
応用ができる考え方です。
言語を学びたいけど、
忙しいからあまり時間が取れない・・・・・・
というあなたにオススメしたい
「翻訳しない脳回路」。
ぜひ、実践してみてください!
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「伝え方研究所」編集部
すぎなおき新聞社で首相の番記者などを経験したのち、伝え方研究所の立ち上げにジョイン。研究所がめざすコミュニケーション力のベースアップを支援している。趣味は、スナップ旅。
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