【自虐ジョーク】発見!異文化コミュニケーション#006

【自虐ジョーク】発見!異文化コミュニケーション#006

こんにちは!

 

日本を離れ、

オーストラリアへ移住することにした

伝え方研究所の杉です。

 

この連載では、海外でみつけた

日本と異なる文化や伝え方をつづっています。

 

今回のテーマは、

オーストラリアの「ジョーク」

 

ジョークにもいろんな種類がありますが、

オーストラリアでウケがいい定番は

意外にも「自虐ネタ」です。

 

「こんなヘマをしてしまって・・・・・・」

というように、

自分自身を笑いの対象にする話し方が、

圧倒的に好まれるのです。

 

自慢話より謙遜が美徳とされる

日本人の伝え方とも、

共通するところがあると感じます。

 

ただ、自虐の伝え方そのものは、

似ていたり、似ていなかったり。

 

はたして、どんなジョークなのか?

 

普段の会話やテレビ、インターネットなどで、

じっさいに耳にしたジョークをご紹介します!

 

 

◇「自虐ネタ」が人間関係で有効なワケ

 

まずは、なぜ「自虐ネタ」が好まれるかに

ついてですが、さまざまな専門家が

「人間関係を深めるのに役立つ」

と分析しています。

 

 

オーストラリアの政府系機関など

複数の団体が集まって、

世界の文化のちがいについて研究する

プロジェクト「Cultural Atlas」は、

このように指摘します。

 

「自虐的なジョークを言うことは、
親しみやすい関係を築くうえで近道。
自分に自信はあるものの
傲慢さを感じさせない方法であり、
生真面目に考えすぎていないことを
示すものだからです」

 

また、オーストラリアの大学の研究論文によると、

このように分析されています。

 

「オーストラリア人は
自分のことをいろいろな名前で呼んだり、
恥ずかしい話をしたり、
最悪な自分を演じることもあります。

しかし、だまされてはいけません。

オーストラリア人は
自分を卑下しがちだからといって、
自分に自信がないわけではありません。

単に、自分が特別な人間だとは
思っていないこと、

そして誰もが同じレベルにいることを
相手に知らせるための手段なのです」

(Western Sydney University)

 

つまり「自虐ネタ」が好まれるのは、

 

「自分とあなたは、同じレベルにいる仲間ですよ」

「マウント取ったりしませんよ」

 

と自分の敷居を下げることで、

相手に安心感や親しみを与える効果があると

考えられているからなのですね。

 

ではさっそく、

自分の欠点や特徴を軽妙にからかう

実際のジョークをみてみましょう!

 

 

◇ダンスが下手な自分を自虐して・・・・・・

 

「私のダンス、『タコが踊っているみたい』と
友達に言われたんだよね。正直に言うね。
足がいくつあるかわからなくなることがある」

(”I was told by a friend that my dancing looks like an octopus trying to dance. It’s true; sometimes I lose track of how many feet I have!”)

 

自虐ネタでも一番よく聞くのが、
この手の “センス皆無系ジョーク”です。

 

「自分はダンスがもう全然ダメで・・・」

 

とストレートに言われる場合と比べると、

印象はまるで違います。

 

「自分はダンス苦手なんだよね・・・・・・」

 

とそのまま言われると、聞き手目線では

 

「打ちひしがれていたり、

悲観的になっていたりするのかも?」

 

という印象がするかもしれません。

 

ですが、

 

「私のダンス、『タコが踊っているみたい』と
友達に言われたんだよね。
正直に言うね。
足がいくつあるかわからなくなることがある」

 

このように言われると、

まったく悲観的な感じはなく、

「笑って大丈夫なんだな」と判断できますよね。

 

そして実際に笑うと、

相手も、どことなくうれしそう。

 

おとなの余裕を感じさせる、気さくでステキな

コミュニケーションだなと感じます。

◇「音痴なので」ではなく・・・・・・?

 

歌うことが苦手な人が放った自虐ネタ。

 

「この前、カラオケバーで才能を
披露しようとしたら、火災報知器よりも
早く部屋を片付けちゃった」

(”I thought I’d show off my musical talents at the karaoke bar, but I cleared the room faster than a fire alarm.”)

 

「自分の歌があまりに音痴で、

バーにいたほかの客が聞くに堪えかねて

出て行ってしまった」という光景を

ユーモアたっぷりに伝えています。

 

この伝え方についても先ほどと同様で、

もし思ったままに

 

「自分、音痴なので・・・」

 

というと場が盛り下がりそうですが、

 

「火災報知器よりも早く
部屋を片付けちゃった」

 

のように伝え方を変えるだけで、

 

「あ、楽しい人だな」

「この人と仲良くなりたい!」

 

と思えてくるから、不思議です。

 

 

◇「ガーデニングが致命的に下手」を自虐で言いかえると?

 

お次も、“センス皆無系”の自虐ネタ。

 

こんどは「ガーデニングが致命的に下手」

なことを自虐ユーモアで言いかえると、

どうなるでしょうか?

 

「ガーデニングを始めたけど、
植物がみな死にたがってるんだよね。
自分の部屋にくる植物はみな
“オレの世話アレルギー”の患者らしい」

(“I started gardening, but it seems like all the plants are trying to die. It’s like every plant that comes into my room is a patient with ‘Allergic to My Care’ syndrome.”)

 

「オレの世話アレルギー」

のようなちょっとした造語もまじえつつ、

現状をシニカルにみる伝え方に

“あきらめ感”がにじみでていて、

おもわず笑いがこみあげます。

 

ちなみに、オーストラリア人はしばしば、

いたって真剣な表情で

自虐ジョークを飛ばすのも、

クスッときてしまうポイントだったりします。

 

 

◇スベった時にも、自虐ネタ?

 

ウケを狙ってジョークを言ったものの、

場があきらかに白けてしまったとき、

“起死回生”の自虐ネタを放った人がいました。

 

それが、こちら。

 

「そういえば、きょうってゴミの日?
僕の記念日があるなんて知らなかったよ」

(“Is it garbage day today? I didn’t know they observed a day in my honor.” )

 

これには、周りも大爆笑。

 

言っている内容そのものは、

やや強烈すぎる気もしますが、

「穴があったら入りたい」気持ちを自虐ジョークと

周りの笑いに昇華させる執念には、

つくづく感心させられます。

 

さらに、スベるといえば、

周りを白けさせた経験そのものを

自虐ネタにしてしまった強者もいました。

 

「この前パーティでジョークを言ったら、
びっくりするほど沈黙が訪れて、
図書館の求人に応募すべきかと思ったよ」

(“I told a joke at the party, and the silence was so loud that I considered applying for a job at the library.”)

 

なんとも気さくな伝え方で、

過去の失敗を笑いに変えていました。

おみごと!

おわりに

 

さて、今回は、オーストラリアで好まれる

「自虐ネタ」をテーマに、クスッときてしまう

伝え方をご紹介しました。

 

悲観的になりそうな自分の短所や、

仕事やプライベートの失敗も、

視点を変えれば「周囲を楽しませる伝え方」

の種になるかもしれません。

 

親しみやすい関係を築くのにやくだつ、

自虐ジョーク。

 

ぜひ、みなさんも

日ごろのコミュニケーションにも、

「ここぞのスパイス」として、

ぜひ応用してみてください!

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