【心配りの英語】発見!異文化コミュニケーション#001

【心配りの英語】発見!異文化コミュニケーション#001

こんにちは!

 

日本を離れ、

オーストラリアへ移住することにした

伝え方研究所の杉です。

 

この連載では、日本と海外の文化の違いを、

コミュニケーションの視点で紹介します。

 

初回は、英語の「丁寧表現」

 

渡航にむけ、欧米人と会話しながら

英語を勉強するなかで、

学校ではまったく学ばなかった、

ステキな伝え方に出会いました。

 

 

「つまらないものですが・・・」を絶賛する欧米人

 

欧米人は、

オブラートに包まずストレートに伝える。

 

そんなイメージを、ぐらりと揺るがす体験でした。

 

「日本人って、礼儀正しいから好き。気遣いの言葉をつけくわえる人が多いでしょう?
たとえば、お土産をあげるときに、つまらないものですが・・・・・・って言うやつとか。あれ、大好き」

これは、日本に10年ちかく住む

アメリカ人の友だちが口にした“日本人評”です。

 

生まれも育ちもアメリカの彼が

「日本に永住することにした」というので、

日本の何がそんなに気に入ったのかと

尋ねたところ、開口一番、

そんな答えが返ってきたのです。

 

この

「つまらないものですが・・・・・・」

というフレーズ。

 

「日本人は言いたいことを

ハッキリと言葉にしない。

謙虚さや慎ましさは、美徳だから」

 

というような、

「空気を読む日本文化」を象徴する

伝え方の一例として、

しばしば紹介されてきました。

 

「あまりにも空気を気にしすぎ」

というツッコミも含めて、

ときに“自虐ネタ”として

紹介されることさえあるので、

この日、アメリカ人がポジティブに

振り切った評価をしたことに、

私はちょっとした驚きを感じたのです。

 

 

学校では教わらなかった!英語の「思いやり表現」

 

さて、このことが新鮮に感じられた私は、

彼にさらに質問してみました。

 

「英語にも、オブラートに包む表現ってあるの?」

 

すると、こんな答えが。

 

「欧米にも“クッション・ステートメント(婉曲的な伝え方)”がたくさんあるよ。
恐れ入りますが・・・・・・みたいな。
それを使った方が、気が利く人になれる。considerate(思いやりがある)って印象だね」

学校で、

「英語には日本語のような尊敬語はない」

と教わった人も少なくないと思います。

 

たしかに、日本語でいうところの

「言う」→「おっしゃる」のように、

単語が変化することは、ほぼありません。

 

でも、だからといって、

「丁寧な表現がない」というわけでは、

もちろんないのです。

 

「丁寧な伝え方」というのは、言いかえれば、

「相手への思いやりに満ちた伝え方」のこと。

 

それは、英語の授業で問われる、

「英単語をいくつ覚えているか」とか

「文法を間違えていないか」とかいう話の前に、

人とコミュニケーションを交わす前提として、

まず大切にしたい姿勢と言えるかもしれません。

 

さて、この「英語版クッション言葉」

実際に見てみると、たしかに

相手への思いやりであふれているのです。

 

 

実際に見聞きした!英語版ていねい表現

 

①If it’s not too much trouble…

(もしそんなにお手間でなければ・・・・・・)

 

アメリカ人の友だちと、

ちょっとだけ高級な国際パブに行ったとき。

私はビールを注文しました。

 

日本語がほとんど分からない彼を

置いてきぼりにしないように、

私がこれから何を注文しようとしているかを、

彼に伝えます。

 

私は、こう言いました。

 

“I want this one.”(私はこれがほしい)

 

まあ、なんともシンプルな英語です。

 

それに対して、

彼が店員に言ったフレーズは、

とても洗練されたものだったのです。

 

“I would love to have gin and tonic if it’s not too much trouble.”
(もしそんなにお手間でなければ、ジントニックをください)

 

バーテンダーへの思いやりに満ちた、

なんとも上品な伝え方。

 

彼のクッション言葉を聞いてからというもの、

私の英語がとても幼稚な言い回しに

聞こえるようになってしまいました。

 

<英語版ていねい表現>
If it’s not too much trouble…
(もしそんなにお手間でなければ・・・・・・)

 

②Correct me if I’m wrong…

(間違っていたら正していただきたいのですが・・・・・・) 

 

次は、新幹線の車内です。

乗り合わせた欧米系の老夫婦に、

とつぜん「英語を話しますか?」と話しかけられ、

こう言われたのです。

 

“Correct me if I’m wrong, I believe that seat is mine.”
(間違っていたら正していただきたいのですが、そこは私の席だと思います)

 

私は、老夫婦の座席に

誤って座ってしまっていたのですね。

 

老夫婦の言葉は、

それを指摘するものだったのですが、

まったく嫌味がなく、

むしろ気配りにあふれた伝え方でした。

 

ちなみに、

日本の英語の授業でしか学んでこなかった私は、

言えたとしても

 

“I think that seat is mine.”
(その席は私のだと思います)

 

くらいが関の山。

 

これだとストレートすぎて、

「あなたは間違っています」と言っているように

聞こえかねない恐れが。反省しました。

 

<英語版ていねい表現>
Correct me if I’m wrong…
(間違っていたら正していただきたいのですが・・・・・・) 

 

③I am sorry to say that…(残念ながら・・・)

 

私はオンライン英会話で

英語を学んでいるのですが、

そろそろ終了の時刻をむかえるとき、

ネイティブ講師がよく使う言い回しがあります。

 

その言い回しがとても丁寧なのです。

 

それを紹介する前に。

私だったら、

 

“It’s time.”(時間です)

 

という表現が真っ先に思い浮かんだのですが、

これだとあまりに味気ないですね。

 

ネイティブの講師は、このように言ったりします。

 

I am sorry to say that we are almost out of time for today.
(残念ですが、もうすぐお時間です)

 

ちなみに、「sorry」は謝るときだけでなく、

「残念」という気持ちを伝える際にも

よく使われる表現です。

 

講師の本当に残念そうな表情も相まって、

「もっと話せたらいいのに・・・・・・」

という名残惜しさがただよう温かい伝え方です。

 

<英語版ていねい表現>
I am sorry to say that…(残念ながら・・・)

 

相手への思いやりを感じさせる丁寧な伝え方は、

言葉の違いをこえて、

「感じ良い」印象を与えるもの。

 

相手がどんな国の人であれ、

コミュニケーションの基本として、

ぜひ大切にしたい姿勢です。

 

 

さいごに

 

「英語がペラペラになれたら良いなあ・・・・・・」

 

私がそんな風にぼんやりと思い続けて、幾星霜。

 

でも、心に思っているだけで

物事が実現するほど、

世の中、甘くはないものです。

 

お年寄りになって、

身体に自由が利かなくなった自分が、

窓の外を見やり、

 

「英語、ペラペラになれたら良いなあ・・・・・・」

 

という全く同じセリフを

口にする姿をふと想像したとき、

ゾッと身震いする思いがしました。

 

そして、心に決めたのです。

 

「そうだ、海外移住しよう」――。

 

筆者はオーストラリア・シドニーに

移り住むことにしました。

 

現地で英語を勉強し、

世界中の人びとと自由に

コミュニケーションできるようになるためです。

 

日本とは異なる文化や考え方をもつ

外国人と関わると、新しい発見が、

きっとたくさん得られるはずです。

 

それは、多くの日本人が思い込んでいる

「当たり前」を問い直す気づきかもしれません。

 

あるいは、今までぼんやりと信じていた考えに、

「やっぱり正しかった!」という“お墨つき”を

与える体験かもしれません。

 

このコーナーでは、

現地で発見したコミュニケーションの知恵を、

できるだけありのままに、

皆さんにお伝えしていきます。

一覧にもどる