こんな時、どう言う?家庭内でモメがちな会話と「伝え方の技術」

こんな時、どう言う?家庭内でモメがちな会話と「伝え方の技術」

「言わなくても分かるでしょ(分かってよ)」という空気が支配する家庭こそ、伝え方が大事!

 

「ゴミ出し、また忘れてる。 『やっといて』って言ったじゃない!」

 

そんなふとした一言がきっかけで、夫婦間で思わぬ口論になってしまった経験はありませんか?

 

ちょっとしたボタンの掛け違いで、もやもや、いらいら。

 

できれば、そんなすれ違いは減らしたいものです。

 

この記事では、そんな夫婦間の「伝え方のもめ事あるある」をご紹介!

 

「もやっ」としない、ベターな伝え方をご提案します!

 

 

 

 

夫婦のコミュニケーションがよくなれば、幸福度アップ!?

 

新型コロナウイルスの影響で、家族と家でいっしょにすごす時間が増えた人もいるでしょう。

 

そこで見直したいのが、夫婦のコミュニケーション。

 

じつは、幸福度に大きく影響するのです。

 

「幸福感を判断する際に重視すること」を調べた国の報告でも、いちばんに挙がった「健康」と同じくらい、「家族」を重視する人が多いことがわかります。

 

だとすると。

 

一緒の時間がふえた夫婦間で、コミュニケーションの質を高めることが、生活の幸福感アップにつながりそうです。

 

では、どうすれば、コミュニケーションをより良いものにできるでしょうか?

 

つぎの3つのポイントを意識してみてください。

 

① 相手の言葉をしっかりと最後まで聞く。
② 言いたいことをストレートにぶつける前に、相手のアタマの中を想像して、相手が受け取りやすいコトバで伝える。
③ 相手に何かをお願いしたい場合は、自分から動きたくなるよう伝える。

 

「自分の言いたいことは、あえてコトバにしなくても分かってもらえるはず」と思いがちな家庭内こそ、「伝え方」をほんのちょっと意識するだけで、見違えるように雰囲気が良くなります。

 

では、早速、家庭でモメがちな「あるあるシーン」を通じて、3つのポイントを詳しく解説していきます。

 

 

家庭でモメがちなやり取り

 

それでは、家庭内でモメがちな「あるある」のやり取りを見ていきましょう。

 

【ケース1】今晩なに食べたい?

あなたが朝ご飯を食べていると、毎日の食事の献立を考えるのに行きづまった奥さんが、

「ねえ、今日の夕食何か食べたいものある?たまには献立考えてよ」

と聞いてきました。

 

あなたなら、なんと答えますか?

 

× 「なんでもいい」

 

そう答えたことのある方、多いのではないでしょうか?

 

(妻) 「えー、その答えが一番困るの!ねえ、毎日考えてるこっちの身にもなってよ」

(あなた) 「今は朝ごはん食べてお腹いっぱいだから無理だよ」

(妻) 「ああ、じゃあいいわ」

 

なんてやり取りをしたことがある方もいるでしょう。

 

そんなときは、こう伝えてみてください。

 

献立を考えるのって大変だよね。
今は思いつかないから、後で思いついたらLINEしてもいい?
〇〇の作るごはん、どれもおいしいから迷うわ。

 

「おいしい」とほめられたら、すぐに献立の回答がなくても、相手は前向きな気持ちになりそう。
献立を考える相手のアタマの中を想像した伝え方です。

 

ポイントは、「献立は考えてくれて当たり前」とスルーするのではなく、相手を認める言葉を、ここで、あえて口にすることです。

 

たったこれだけで、夫婦のコミュニケーションが明るくなり、幸福度もアップするでしょう。

 

ほかにも、献立を聞かれた時に、「パートナーとして、こう言われるとうれしい」と思う返しをピックアップしてみました。 返答に困ったら、ぜひ使ってみてください。

 

■献立を聞かれたときに使える返し
(※具体的なお料理名は一例です)

 

①パートナーの得意料理をリクエスト

「この前作ってくれたチーズリゾット、また食べたいな」

「〇〇の作る唐揚げは定期的に食べたくなる味なんだよね」

 

②鍋料理やパスタなど、ほかとくらべて準備にあまり時間がかからない料理をリクエスト

「そろそろキムチ豆乳鍋の季節だよね?」

「和風きのこスパゲッティが食べたいな」

 

③いっしょに台所に立つ

「今度の休みにYouTubeで見た『至高の唐揚げ』を作ってみたいんだけど、サポートお願いしていい?」

 

 

 

【ケース2】アドバイスしただけなのに……

 

奥さんから愚痴をきいて、あなたが「良かれ」と思って発したひと言。

 

想像とはうらはらに、なんだか不服そうな返事が返ってきたこと、ありませんか?

 

 

例えば……

 

(妻) 「この前、お弁当の汁がもれてて、仕事用のカバンが煮物くさくなっちゃったのー」

(あなた) 「それはちゃんとビニール袋に入れて持っていかないからだよ」

(妻) 「分かってるけど、うっかりやっちゃったの!(怒)」

 

あなたは「適切なアドバイスしただけなのに……なんで怒ってるんだろう?」と思いますよね。

 

私が提案したい「より良い返し」をご紹介する前に、ここで、かつての実体験をお話ししましょう。

 

 

専業主婦だった私が、娘といっしょに育児サークルに入っていた時のこと。

 

メンバーは「どんな遊びがしたいか」について、みんなでアイデアを出し合う決まりでした。

 

ところが、意見がなかなか出ず、私は別のメンバーとふたりだけで、毎回のように準備するようになっていきました。

 

当時はインターネットなんて便利なものはありません。
アイデア探しが、結構な負担になってしまったのです。

 

たまりかねて、ある日、夫に愚痴をいいました。

 

「聞いてよ。育児サークルの人たちが、全然アイデアを出してくれないの」

 

すると、即座に返ってきたコトバは

 

「やってあげるからダメなんだよ。その人たちに考えさせて、自分の意見を出さなければいいんだよ」

「アイデアを考えるのがそんなに大変なら、育児サークルを辞めたらいい」

……なんとも“正論すぎる”アドバイスでした。

 

私は、正論が聞きたかったわけではありません。ちょっと話を聞いて励まして欲しかっただけなのに……。

 

かえってモヤモヤがつのってしまい、「あー、もうこの人に話すのはやめよう」という気持ちになってしまいました。

 

では、私は何と言ってもらえれば、残念な気持ちにならずに済んだのか?

 

私が提案したいベターな伝え方が、こちらです。

 

そうかー、みんなは協力的じゃなくて随分と大変な思いをしてるんだね。
でも毎回子供たちは喜んでくれてるんだよね?
すごいことだと思うよ。 よく頑張ってるよ。

 

ポイントは、まずは、相手の気持ちに寄り添うこと。

 

奥さんの話を聞いて心に浮かんだ言葉をそのまま伝えず、相手の立場を想像して口に出す。
なぜ、この話を自分にしてきたのか?どんな言葉を待っているのか?

それこそが、重要なポイントです。

 

もやもやする気持ちをただ聞いてほしいだけの時に「こうした方がいい」などと正論を言われるほど、腹立たしいものはありません。

 

アドバイスをする際は、話をひととおり聞き終えて、相手が落ち着いた状態になってから。

その時に、「さっきの話なんだけど、僕の考えを話してもいいかな?」と切り出せば、案外、本人も素直に耳を傾けてくれるものです。

 

 

 

【ケース3】排水口の髪の毛も……。

家事を分担したものの、相手の作業が、中途ハンパ。
そんなとき、あなたなら、なんと言いますか?

 

たとえば、おふろ掃除の場面。

 

掃除を終えた直後なのに、排水口に髪の毛が残っていたとします。
「そこが肝心なのに!」 とガッカリしてしまいますよね。

 

× 「ねえ、今度からおふろ掃除の時は、ちゃんと排水口にたまった髪の毛も捨てておいて」

 

普通だったら、このように言うでしょう。

 

「ああ、ごめん、ごめん」といったんは受け入れてくれそうですが、次回以降、行動を改めてくれる可能性は、そんなに高くないかもしれません。

 

では、こんな風に言ってみたらどうでしょう?

 

いつもお風呂をピカピカにしてくれてありがとう。今度は、ついでに排水口にある髪の毛も捨てておいてくれたら、ぬるぬるしなくて助かるんだけど、お願いできる?

 

ここでのポイントは、まずは、感謝を伝えること。

 

NGの伝え方では、頭ごなしに否定されたように感じるのに対して、「ありがとう」のひと言があるだけで、後につづくお願いコトバが受け入れられやすくなります。

 

これは、『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)で紹介されている「感謝」という「伝え方の技術」です。

 

さらに、「ピカピカにしてくれて」と認めるコトバを伝えることで、「次はもっとピカピカにしよう」と自主的な行動も期待できそうです。

 

こちらは、「認められたい欲」という伝え方の技術です。

 

人になにかをおねがいしたいときに、この伝え方の技術をつかうと、相手に刺さるコトバをカンタンにつくることができるので、とってもおすすめです!

 

 

【ケース4】寝かしつけたばかりなのに……

 

ようやく子どもを寝かしつけて、ホッと一息。

 

……と思ったのもつかの間、仕事帰りの旦那さんが子どもに「帰ったよ〜」と声をかけるや、パチッと目が覚め、泣き出して大騒ぎ。

 

そんなこと、ありませんか?

 

たとえ「寝かしつけた苦労が、一瞬で水の泡に!」とイライラしたとしても、ここで、

 

× 「もう!せっかく寝かしつけたところなのに!なんで起こすの?」

 

と、旦那さんに感情をストレートにぶつけるのは、得策ではありません。

 

そのまま、

(夫) 「うるさいな、そんなに怒ること?」
(妻) 「この時間には寝かさないと、明日の朝、大変なのに」

なんて言い争いが起きてしまうかも……。

 

そんなときは、こんなふうに伝えてみてください。

遅くまで、お仕事おつかれさま。
帰ってきてすぐに会いたい気もちも分かるけど、この時間に起こしちゃうと、子どもの生活リズムが崩れちゃうの。
発育にもよくないから、顔をみるのは、しっかり寝入ってからだと助かるわ!
ありがとうね。

 

旦那さんは、いくら子どもの顔をみたくても、子どもの生活リズムがくずれることは望んでいないはず。

 

この伝え方も、『伝え方が9割』で解説している伝え方の技術をつかっています。
相手が望まないことをコトバにして伝える「嫌いなこと回避」です。

 

さらに、「ありがとう」と「感謝」も加えるのもポイント。
「ありがとう」と感謝のコトバを伝えられると、ひとはお願いを断りにくくなります。

 

こんな風に、相手のアタマの中を想像してコトバをつくれば、素直にきいてもらえる可能性を高めることができます。

 

ちなみに、つい起こしてしまった側も、こんな風に伝えてみてはどうでしょうか?

 

つい起こしてしまってごめん。顔を見たくて。
寝かしつけてくれた努力をムダにしたくないから、『そろそろ大丈夫』っていうタイミングを教えてくれる?

 

お互いを思い合ってコトバにしていけば、よりよい関係ができていくはずです!

 

 

 

【ケース5】食事中にスマホ

 

あなたが用意した夕食を食べながら、スマホをいじるのに夢中な奥さん。

 

せっかくつくったのだから、もっと味わって食べてほしい……。

 

あなただったら、なんと言いますか?

 

× 「ねえ、まだスマホ見てるの?ご飯食べるかスマホ見るかどっちかにしたら?」

こういうふうに言ってしまいがちです。

 

でも、もしかしたら、こんな会話が続いてしまうかもしれません。

 

(妻) 「少し位いいでしょ。今日はずっと欲しかった物が入荷するかもしれないからチェックしておきたいサイトがあるの」

(あなた) 「それ今じゃなくてもよくない?」

 

言い争いになっては、せっかくの食事の時間が台無しです。

 

では、例えば、こんな伝え方をしてみてはどうでしょう?

 

スマホを見ながら食べると、無意識にかむ回数がへって、太りやすくなったり、消化がわるくなったりするんだって。
健康でいてほしいから、スマホ見ながら
じゃなくて、いっしょに食べてくれたらうれしいな。

 

これなら、自然とスマホを置いてくれそうです。

これも、「嫌いなこと回避」という伝え方の技術をつかった伝え方です。

 

 

 

伝え方のポイント

さて、5つの「あるあるシーン」を見てきました。

 

どんなシーンにも共通する「伝え方」のポイントは、

 

   相手のアタマの中を想像すること !

 

自分の言いたいことをそのままコトバにするのではなく、いったん「相手は何を考えているか」に思いを寄せてから伝えることが重要です。

 

伝えたいことは同じでも、「伝え方」を変えるだけで、相手から自分への印象をポジティブにし、モメごとも少なくすることができるのです。

 

 

 

日本人は空気が読める?

相手のアタマの中を想像する力は、日ごろから、できる限り相手の言葉を聞き、よく観察することで身につきます。

 

一般に日本人は、相手の気持ちを想像する能力に長けていると言われます。

 

日本では、生まれ育ってきた環境がかなり似ていて、コトバにしなくても相手の考えがわかり「空気を読める」とされるからです。

 

しかし実際は、人が育った環境はもちろん違いますし、性格も置かれている状況も千差万別です。

 

「私の常識は、あなたの非常識」を意識すること

 

たとえ家族だとしても、それが円満なコミュニケーションの「はじめの一歩」になります。

 

 

 

みえないギャップに要注意

 

「私の常識は、あなたの非常識」

それは、今回、例に登場した「家事の役割分担」ひとつとってもそうです。

 

男女の考え方の違いはもちろん、ジェネレーションギャップだってあります。

 

アンダー30は「結婚後の家事分担は半々にしたい」と考える人が7割を超えている一方で、40代以上の男女には「家事は妻や娘がするもの」との考えがまだまだ根強く残っています。
(出典:内閣府2019年男女共同参画社会に関する世論調査)

 

夫の在宅時間が増えた結果として、妻の家事の負担が増えたといわれる背景には、そんな実情があるのでしょう。

 

家事の分担や育児などは、人によって考え方が割れがちなテーマだからこそ、相手と自分の考えを一度丁寧に話し合うことも、円滑なコミュニケーションにつながる重要なアクションです。

 

 

やっぱり名前って大切

夫婦の伝え方のコツを、最後にもうひとつ。

 

それは、相手の呼び方についてです。

 

あなたはお互いを名前やニックネームで呼んでいますか?

 

奥さんを「ママ」「お母さん」、旦那さんを「パパ」「お父さん」と呼び合う家庭もあるでしょう。

 

ここでぜひオススメしたいのが、互いに名前で呼び合う方法です。

 

心理学に「ネームコーリング効果」というものがあります。
人は自分の名前を呼ぶ人を、無意識に好きになりやすいのです。

 

「いきなり名前を呼び合うのはちょっと……」という人は、もちろん、やりやすい方法からスタートしてOK!

 

たとえば、子どもが一緒にいるときには「ママにもあげて」などと“パパ/ママ呼び”をしつつ、「二人だけの会話では、名前やニックネームで呼び合うようにしよう」というルールを決めるだけでも、コミュニケーションに大きな違いが出てくるでしょう。

 

名前を呼びあうことで「相手を大切に思っている」というメッセージが伝わり、家庭がより明るい雰囲気になりますよ。

 

まとめ それでもコトバにして伝えよう

家庭でモメがちな会話と伝え方の技術を、具体的な例を挙げてお伝えしてきました。

 

じぶんの頭の中をそのままコトバにしない習慣をつけるだけで、大きな違いが感じられるようになるはずです。

 

「言わなくても分かるでしょ(分かってよ)」という空気が支配する家庭こそ、ぜひ、「伝え方」を意識してみてくださいね!

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