見えた!ビジネス・啓発書の「ヒットの法則」

見えた!ビジネス・啓発書の「ヒットの法則」

 

海外で売れたものには、共通点がある

 

近年、海外で、日本の「啓発書」がヒットする例が相次いでいます。

 

はたして、外国人に、なにがウケたのか?

 

分析してみると、カギは、日本人だけが「当たり前」だと思っている、

そんな“日本的思考”にありました。

 

たとえば、「ものにはすべて魂が宿っている」。

 

ひとたび外国に出ると、

 

「なんだ、それは!?」

 

と珍しがられ、全米で大ヒットした啓発本があります(詳しくは後述)。

 

ありふれた日本式の思考法が、海外でヒットをたぐりよせる。

 

そう、日本が元気になるヒントは、じつは、超・身近なところにあったのです!

 

 

“ヒットの法則”

 

今回、伝え方研究所では、「世界で売れるカギ」を徹底研究。

 

世界で100万部以上売れた、

啓発書3タイトルの共通点を分析しました。

 

<世界でヒットした代表的な啓発書>
1)『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵著)
2)『生き方』(稲盛和夫著)
3)『伝え方が9割』(佐々木圭一著)

 

その結果、どの書籍にも共通している4つのポイントが見えてきました。

 

<世界ヒット啓発書・4つの共通点>
①日本人が昔から大切にしてきた考え方
②体系化された繊細なスキル
③豊富な実例
④だれでも実行できて劇的に変わる

 

この記事では、これら4つの共通点をくわしく解説します。

 

“ヒットの法則”を探れば、

あなたのビジネスが、そして日本が、

大きなチャンスをつかむ、

そんな明るい未来が見えてくる。

 

さっそく、見ていきましょう。

 

 

これがヒットの最大の要因だ!

 

一つ目にして最大の共通点。

 

それは、いずれの書籍も

「日本人が昔から大切にしてきた考え方」

をベースに書かれているということです。

 

日本人にとっては一見、なんの変哲もない「当たり前」な考え方でも、

ひとたび世界へ出ると、「新鮮なもの」と受けとめられる傾向がみられました。

 

どういうことでしょうか?

 

たとえば、『片づけの魔法』。

 

この書籍では、「モノと対話するエピソード」が繰り返し出てきます。

 

あるページでは、バッグをめぐる、こんな記述が。

 

「せめて家にいる間くらい、
しっかり休ませてあげなくては、バチがあたる。
使っていないときもモノが入れっぱなしの状態は、
寝ている間も胃に食べ物がぎっしり詰められているのと同じで、
(バッグも)つらいはず」

 

著者の近藤麻理恵さんは、

帰宅後にバッグの中身をすべて取り出して、もとの場所にもどし、

いったん空にしてから眠りにつくのだそうです。

 

こうした記述の背景にあるのは、

すべてのモノには魂が宿るという「八百万の神」の考え方に通じる、日本的な思想です。

 

日本人にとってはなじみ深いものですが、

これが世界では、「とてもユニークで神秘的な考え」として受け止められたようです。

 

近藤さんは、こう分析します。

 

「アメリカでメディアに出演すると、
『捨てるモノに感謝する気持ちをかけるのはどうして?』と
かならず聞かれます。
そうした部分で、日本的、東洋的な神秘性を感じてもらったのが
本がヒットした大きな要因だったかもしれません。
また、アメリカの番組で私が依頼人の家を片づけるとき、
入る前に、かならず家に対してあいさつをするんですが、
これがちょっとした儀式として受けとめられたりもします。
華道や茶道のような、手順や型を意識することの美しさと
重ね合わせられることが多いんでしょうね」

 

つぎに、中国を中心にヒットした『生き方』(稲盛和夫著)もみていきましょう。

 

この本もやはり、「日本人になじみの考え」を展開して

世界でヒットしたという共通点があります。

 

著者は、京セラや第二電電(現KDDI)を創業し、

さらには日本航空(JAL)を再建した稲盛氏。

日本のビジネス界では、

知らない人がいないほどの有名人です。

 

彼は、この本で、「生きる目的」について「日本の伝統的な価値観」から説いています。

 

「生まれたときよりも、少しでも美しい心になって死んでいくのが生きる目的」

 

そして、こう記しています。

 

「人生や仕事に対して、できるかぎり誠実であること。
手を抜くことなく、真面目に一生懸命に働き、生きるということ。
これは貧しい時代の日本を生きた人にとっては格別珍しいことではなく、
当時の日本人に血肉化されていた特徴であり、
また美徳であった」

 

この日本の伝統的な価値観にもとづいた言説が、

とくに経済成長いちじるしい中国で評価され、ヒットしたのです。

 

 

最後に、『伝え方が9割』も見てみましょう。

 

この本の、1番のコア(中核)となるメッセージは

「相手のことを想像して伝える」という、

これまた日本人になじみのある考え方。

 

日本人は、子どものころから学校で

「相手の立場になって考えなさい」

と教育されてきましたよね。

 

「自分の思ったままストレートに伝えるのではなく、
まずは相手の頭のなかを想像して、
相手が自然とやりたくなるように伝えるのがポイント」と説くこの本は、
まさに、「相手をおもんぱかることが大切」という
日本人が古くから引きついできた文化そのものです。

 

『伝え方が9割』は今回、中国で100万部を突破しましたが、

現地の編集担当者であるリンさんは、こうも分析しています。

 

「中国では、年間で3万部売れれば好調と言われるところ、
100万部売れました。本当に稀なことです。
この本が刊行されたとき、
中国では『EQ(心の知能)』が流行していました。
そんななかで『伝え方が9割』が土台にすえている
『相手の心を想像する』というコンセプトが広く読者に受け、
またたく間にヒットしたのだと思います」

古来から脈々と受け継がれてきた大切なものを世界に展開することで、

新鮮に受け止められたり、喜ばれたり、役に立ったりする。

 

そんな特徴が、3つのタイトルに共通してみられるというわけです。

 

 

スキルの繊細さ

 

さらに、海外で何が注目されたかを探るなかで、海外の読者から共通して出てきた、

あるコトバがあります。

 

2つ目の共通点、「繊細さ」です。

 

中国で『伝え方が9割』の販促を担当した楼さんは、このように話しています。

 

「伝え方に関するきめ細かい表現方法が、すごく日本らしい」

 

補足すると、『伝え方が9割』では、

「伝え方の技術」として7つの伝え方の切り口を紹介しています。

 

たとえば、部下に対して企画書をお願いする際、

 

× 「残業お願いできる?」

 

と、ストレートに伝えるのではなく

 

◎ 「きみの企画書が刺さるんだ。残業お願いできない?」

 

と、相手を認めるコトバを伝えることで、

相手はお願いに快く応じてくれやすくなるという事例が紹介されています。

(ちなみに、これは伝え方の技術の一つ「認められたい欲」です)

 

楼さんは、『伝え方が9割』が、こうした繊細な伝え方をひとつずつ拾い集め、

「技術」として体系的にまとめたところに特色がある、と分析しているのです。

 

じっさい、著者でコピーライターの佐々木圭一氏によると、

確かに「ていねいな文章」を心がけて執筆し、日本でも100万部を突破しているものの、

日本の読者から「きめ細かいですね」と言われたことはないのだとか。

 

(『伝え方が9割』の中国語版の表紙)

 

また、「繊細さ」でいえば、『片づけの魔法』も同じ。

 

普通だったら見過ごしがちな、こまやかなスキルがつぎつぎと登場するのが特長です。

 

たとえば、「モノは積まずに、立てる」

 

モノを縦につみあげていくと、

下になったモノが押しつぶされてしまうことなどから、

著者のこんまりさんは、

縦に積むのではなく、立てて収納することを勧めています。

 

こうした繊細な視点は、

海外から見れば、貴重な価値になると言えそうです。

 

 

事例をとにかくいっぱい入れる

 

つづいて、共通点の3つ目は「豊富な実例」です。

 

世界でヒットした啓発本3タイトルは、とにかく実例の数がいっぱい。

 

「論より証拠」です。まずは次の表をご覧ください。

 

 

一般的には、書籍一冊あたりの実例は20前後ともいわれるなか、圧倒的な量です。

 

実例をふんだんに取り入れることで、読者を飽きさせなかったり、

読者が自分に引きつけて考えやすかったりする効果があるのです。

 

ちなみに、『伝え方が9割』に登場する事例は

日本のCMコピーやドラマのセリフなど、ドメスティックな題材もかなり多いのですが、

これがそのまま中国でも受けいれられました。

 

「日本のポップカルチャーに関心がある読者が中国には多いので」と、

前述の楼さんは理由を分析しています。

 

 

だれでも実行できて劇的に変わる

 

最後の共通点は、

だれでも実行できて、劇的に変わる内容であること。

 

うまれつき天才的な能力をもたない平凡な人でも、

本を参考に実行すると人生がガラリと好転する。

 

こうした構文が随所に見られました。

 

具体的にみていきましょう。

 

まず、『人生がときめく片づけの魔法』です。

 

なんど片づけてもリバウンドしてしまう経験をもった読者や、

そもそも、片づけに苦手意識をもった読者が少なくないことを念頭に、

著者の近藤麻理恵さんは、なんども優しく呼びかけます。

 

「だいじょうぶ。正しい片づけ方を身につければ、誰にだってできる」
「一気に片づけをしたその日から、誰もが片づけられるようになる」

 

そのうえで、正しい片づけによって、

その後の人生にどのような影響が出るかをドラマチックに語っています。

 

「片づけを完ぺきに完了させると、目の前の景色はガラリと変わります。
それはもう、住む世界が一瞬にして変わったのではないかというくらい、
圧倒的で劇的な変化です」

 

最初は半信半疑だった読者も、

「そこまで言うのなら……自分にもできそうかも?」と、

次第に引き込まれていく作りになっています。

 

この“劇的変化構文”は、『伝え方が9割』でも。

 

「伝え方のプロ」とよばれる著者の佐々木氏は、

むかしは今とは真逆で、

「文章や伝えることがニガテだった」ことが描かれています。

 

あるときまで、

 

「伝え方は生まれ持ったセンスに左右される」

 

と思い込んでいた著者が、

 

「伝え方にも、算数の公式のような法則がある」

 

と気づいたとたん、人生が好転したことが語られます。

 

コピーの賞を受賞したり、名だたるアーティストのクリエイティブを手がけることになったりと、その変化はまさに劇的でした。

 

著書で繰り返し語られるコトバがあります。

 

それが、

 

「伝え方はセンスではない、技術だ。誰でも学ぶことができます」

 

そして、

 

「伝え方は技術だと知ったその日から、劇的に変わった」

 

というものです。

 

これも、まさに「だれでも実行できて、劇的に変わる」という再現性をうたう構文です。

 

 

稲盛氏の『生き方』には、だれにでも実践可能な「人生の方程式」が登場します。

 

この方程式を実践することで、人よりも豊かな人生を送ることができるというものです。

 

著者はこのように紹介しています。

 

「この『人生の方程式』は、
人並みの能力しかもたなかった私が、
人並み以上のことをなして、世のため人のためにわずかなりとも役立つためには
どうしたらいいかと考えた末に見いだした方程式であり、
その後、実際に仕事をし、人生を歩むうえで、つねに自分の生き方のベースとしてきた」

 

稲盛氏もやはり、

もともとは平凡だったが、「人生の方程式」を指針とすることで豊かな生き方を追求してきたことを説いています。

 

 

4つの“ヒットの法則”

 

海外でヒットした啓発本の共通点をみてきました。

 

<世界ヒット啓発書・4つの共通点>
①日本人が昔から大切にしてきた考え方
②体系化された繊細なスキル
③豊富な実例
④だれでも実行できて劇的に変わる

 

あなたのビジネスで、ぜひ取り入れてみてくださいね!

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