第5回「伝え方グランプリ2021」ベスト10発表!

第5回「伝え方グランプリ2021」ベスト10発表!

「その年、もっともすばらしかった伝え方ナンバーワン」をきめる「伝え方グランプリ」。

伝え方研究所の研究員らがこの1年をふりかえり、印象的な伝え方をノミネートしました。

このうち、メルマガやSNSなど幅ひろい媒体をつうじた一般投票でえらばれた、ベスト10を発表いたします!(※文中の肩書きは当時のものです)

 

 

 

第10位 「自分の将来は周りが決めるんじゃねぇ、世の中の流れに乗るもんでもねぇ。自分の人生は自分で作る。人生はどうなるかじゃなく、どうするかだ!」

 

まずは、受験をテーマにしたヒット作から。

2021年版「ドラゴン桜」です。

 

阿部寛さん演じる

元暴走族の弁護士・桜木建二は

ちょっぴりシニカルだけど、

生徒たちへのあたたかい愛情も

にじませる親分肌。

 

おちこぼれの生徒たちを

東大に合格させようと

奮闘します。

 

そんな桜木が、

「大学入試共通テスト」にのぞむ

生徒たちに語りかけた、

このコトバがランクインしました。

 

「自分の将来は周りが決めるんじゃねぇ、
世の中の流れに乗るもんでもねぇ。
自分の人生は自分で作る。
人生はどうなるかじゃなく、どうするかだ!」

 

自分の進路や生き方は、

親がきめるものではない。

まして、「こう生きるべき」という

社会の空気に合わせるものでもない。

自信と勇気をもって、

自分のすすみたい道を、

自分の足で歩こう——。

 

そんなメッセージが

多くの人の心を捉えたのは、

先行きがはっきりしない時代にいきること

とも、無関係ではないでしょう。

 

受験生だけでなく、

生き方に悩めるすべての人にとって、

道しるべとなる名ゼリフです。

 

 

 

第9位 「農業って景色作れるんだなって」

 

東日本大震災から10年。

 

いまもたくさんのボランティアが

地域をもりあげようと、

活動をつづけています。

 

宮城県石巻市で、

ビールの原料となるホップをそだてる

加納実久さんも、そのひとり。

 

彼女の

このコトバが9位に入りました。

 

 「農業って景色作れるんだなって」

 

ホップが旬をむかえる夏には、

青々としたグリーンカーテンが一面に

広がるそうです。

 

その景色は、

10年前は想像すらできなかった

かもしれません。

 

小さな歩みがつみかさなり、

大きな未来をつくっていく。

 

復興に向けた希望を感じる素敵なコトバです。

 

 

 

 

第8位 「みなさんの、プラモデルを作ったり好きな色にするのが楽しいその気持ちと、作ったプラモデルをみんなにじまんする場所は、おじさんが必ず守ります」

 

子どもたちが工夫して作った

プラモデルを見せあう

「こどもプラモコンテスト21」。

 

その作品がSNSで紹介されると、

「どうせ親が作ったんだろ」などと

心ない反応が……。

 

そんななか、

主催者が子どもたちに向けて

発表したコトバが話題をよびました。

 

「みなさんの、
プラモデルを作ったり
好きな色にするのが
楽しいその気持ちと、
作ったプラモデルを
みんなにじまんする場所は、
おじさんが
必ず守ります」

 

こどもの気持ちを

想像した、頼もしくあたたかい伝え方。

心に響きます。

 

このコトバひとつに

救われた子どもや保護者たちは

たくさんいたのではないでしょうか。

 

心のゆとりを失いがちな今だからこそ、

私たちも“おじさん”のように前向きな

コトバを使いたいものですね。

 

 

 

第7位 「(以前は)勝って当たり前でした。それを失って初めて、勝つことの意味をちゃんと感じられるようになりました」

 

池江璃花子選手が病気とたたかい、

プールに戻ってきて1年足らず。

 

今年2月に

女子50メートルバタフライで、

復帰後はじめて1位につきました。

2位以下に体ひとつ分の差をつける

圧巻の泳ぎでした。

 

このレースのあと、

池江選手が語ったコトバです。

 

「(以前は)
勝って当たり前でした。
それを失って初めて、勝つことの意味を
ちゃんと感じられるようになりました」

 

シンプルな喜びだけでなく、

勝負への真摯なきもちが、

ひしひしと伝わってきます。

 

ブランク明けの昨年8月、

涙を浮かべた池江選手は

「第2の水泳人生の始まりかな」

と語りました。

 

そんな第2の人生でむかえた“初優勝”。

 

闘病中の人や挫折を経験した人、

そしてコロナ禍で不安な生活を送る

多くの人びとにとって、

大きな希望を与えたにちがいない、

そんな伝え方が7位につきました。

 

 

 

 

第6位 「靴を綺麗にすることも大切、自分を支えるものを大事にしたら自分も大事にされるようになる」

 

6位は、ツイッターで話題をよんだコトバです。

 

子ども時代、

学校がきらいだった投稿者さん。

 

夏休み明けのある日、

おじいちゃんにつぶやきました。

 

「学校、いきたくない」

 

すると、おじいちゃんは

ピカピカの靴をかってきてくれたそうです。

 

はいてみると、

なぜか「学校にいきたい」とおもえるようになったそう。

 

そのとき、

おじいちゃんが

投稿者さんにかけたコトバがこちらです。

 

「靴を綺麗にすることも大切、
自分を支えるものを大事にしたら
自分も大事にされるようになる」

 

長い人生で、

きっと、いろんな局面を生きてきた

おじいちゃん。

 

たくさんの経験がひと言につまった、

深くも、繊細な教訓です。

 

このことをいつまでも胸に大切に刻みたい、

そんな気持ちにさせてくれる伝え方です。

 

 

 

 

第5位 「野球を好きなまま終われてよかった」

 

西武の松坂大輔選手が、

ことしプロ球界をさりました。

 

松坂選手といえば、

歴史にのこる記録をいくつも残した「平成の怪物」。

 

最年少で1億円プレーヤーになったり、

イチローから3打席つづけて三振をうばったり、

“史上もっとも大型”と言われる契約を

レッドソックスと結び、

ワールドシリーズで勝ち投手となったり——。

 

23年にもおよぶプロ生活の最後は

球場をつつみこむ盛大な拍手で送り出されました。

 

「野球を好きなまま終われてよかった」

 

引退会見のコトバです。

 

ひとつの時代がおわりをむかえたような

さみしさと、

ワクワクさせるプレーの思い出が

同時にこみ上げてくる伝え方。

 

長い間、本当におつかれさまでした。

 

 

 

 

第4位 「多額の現金をお持ちで、息子さんやお孫さんとお待ち合わせのお客さま!!伝言がございます。駅の事務室へお越しいただき、駅係員にお声掛けください」

 

どんなに注意していても、

だまされてしまう人が

あとをたたない詐欺被害。

 

その額は、

1年間で、数百億円にのぼるともいわれます。

 

対策にアタマを悩ませる現場で、

ことし、すばらしい伝え方が

生み出されました!

 

「多額の現金をお持ちで、
息子さんやお孫さんと
お待ち合わせのお客さま!!
伝言がございます。
駅の事務室へお越しいただき、
駅係員にお声掛けください!」

 

京急電鉄の北品川駅にはられたメッセージです。

 

「詐欺」の文字はどこにもありませんが、

これが絶妙なんです。

 

どういうことかというと、

「自分がだまされるはずはない」

と思っている人は、かなり多い。

そんな人に「それ、詐欺だよ!」と直球で伝えても、

「そんなわけない!」と

意に介さず、通りすぎてしまうかもしれない。

 

でも、「伝言がある」といわれれば、

「なんだろう?」と思って

しぜんに駅員をたずねたくなるのです。

 

すばらしいのは、

「どうすれば伝わるか」と考え、

お客さんの視点を

深く、深く、想像したうえで、

コトバを組みたてたこと。

 

じつは、この駅、

新型コロナの影響で

係員がいる改札口の窓を閉めたので、

お客さんと話す時間が減りがちになっていたとか。

 

係員が

「そんな状況でも、なんとか対策をとれないか」

と頭をひねった結果、

うみだされた伝え方だったのです。

 

これぞ、人を救うコトバだと思います。

 

 

 

 

第3位 「(国民栄誉賞は)まだ早い」

 

さて、ここからはいよいよ、上位3位のコトバをご紹介します。

 

ことしは

大谷翔平選手の大活躍が

とまりませんでした。

 

そんな「SHOタイム」の次に

待っていたのが、「賞タイム」です。

 

アメリカ大リーグのMVP(最優秀選手)、

史上最年少でのコミッショナー特別表彰、

シルバースラッガー賞などなど、

“表彰ラッシュ”がとまりませんでした。

 

ついには、日本政府からも

「国民栄誉賞をおくりたい」と

打診されるまでに。

 

しかし、大谷選手は丁重に断り、

こう語ったのでした。

 

「まだ早い」

 

かれは今シーズンをふりかえり、

「(来季は)もっともっと高いレベルで数字が残る」

と宣言しています。

 

まだまだ、やれる。

 

このコトバには、

そんな前向きで、力強い信念がこめられているに

違いありません。

 

常人には

なかなか言えないコトバですが、

一方で、「自分も、自分なりにがんばろう」と

刺激をもらえた人が

大勢いたことでしょう。

 

 

 

 

 

第2位 「宝塚の舞台に立っている瞬間は夢を見ていた」

 

つづいて、2位に選ばれたのは、

ことし宝塚を卒業した大スター、珠城りょうさんの

このコトバ。

 

「宝塚の舞台に立っている瞬間は夢を見ていた」

 

一般投票がおこなわれた各チャネルのうち、

Twitterでは、

他をよせつけない圧倒的1位を獲得しました。

 

珠城さんは、近ごろでは

天海祐希さんに次ぐ早さで

トップに就任。

 

それから約5年間、

宝塚の月組を引っぱってきました。

 

「初めは大きく感じた羽も、

組のみんなの思いが1本1本の羽になり、

ファンのみんなの思いが温かい風を起こし、

私は今、軽やかに羽ばたいています」

 

こんなコトバとともに

さわやかに、軽やかに、

珠城さんは旅立ちました。

 

夢は、はかなく消えやすい。

 

そんなコトバもありますが、

珠城さんの場合は、きっと違うでしょう。

 

夢に全力をささげた

珠城さんの情熱的な姿が、

ファンや組の後輩の胸に

「思い出」として灯りつづけるかぎり、

珠城さんのステキな残像は

燃えさかる炎のように、

ずっと消えないだろうと思います。

 

そんな「夢の世界」を感じさせる

素敵なコトバでした。

 

 

 

 

 

第1位 「学校は友だちができなくても当然の場所」

 

さて、「伝え方グランプリ2021」

いよいよ第1位の発表です!

 

それが、こちら。

 

「学校は友だちができなくても当然の場所」

 

共感がひろがり、

メルマガやGoogleフォームで

圧倒的な票を集めた、このコトバ。

2位をわずかながら上回り、

今回のグランプリに選ばれました!

 

学校という狭い空間で、

きまりきった価値観に

自分をおしこめようとしなくて大丈夫。

うまくなじめない自分がいても

いいんだよ、

正しいんだよ——。

 

そんなあたたかさと、

前向きにさせてくれる雰囲気が、

幅広い支持をあつめました。

 

コトバの主は、

ヒャダインこと前山田健一さん。

 

こどものころ、

学校でいじめられた経験もあり、

「ひとりぼっち」を感じる場面が多かったそう。

 

そんなヒャダインさんが

ことし8月の終わりに

「今、つらい子どもたち」

へ向けて発したコトバです。

 

ヒャダインさんは、こうも続けます。

 

「なんとか一日一日を乗りこえ、

学校から解放されたとき、

自分の好きなものを

いっしょにシェアできる

友だちが待っている世界、

お仕事で新しいことに

挑戦できる世界があります」

 

みずから命をたつ子どもが

もっとも増えるのは、

夏休みがおわり、学校がはじまる直前の

8月末といわれています。

 

ヒャダインさんのコトバに触れたことで、

「学校だけが全てじゃない」

と、明日への希望をつないだ子どもがいたでしょう。

実際に、全国の何人かの子どもの命を

救ったコトバだと思います。

 

命を救うことができる、ひとこと。

これこそが、2021年のグランプリとなりました。

 

 

以上、一般投票でえらばれた

「伝え方グランプリ2021」の結果発表でした。

 

■ ■ ■

 

さて、新型コロナの1例目が報告されたのは、2019年。

当初は、こんなにも長引くなんて、だれが想像したでしょうか。

 

どうしても心がふさぎこみがちになり、

悲観的なコトバや、人をきずつけるコトバが

例年以上に、世にあふれています。

 

でも、

聞いただけで救われるような、

前向きになるようなコトバだって、

日々たくさん生まれています。

 

「あ、気持ちがすこしだけ明るくなった」

「今年も、悪いことばかりじゃなかったな」

 

ここで紹介したのは、

受けとった人を

そんなふうに

ちょっぴり元気にするコトバたちでした。

 

2022年もまた、

素敵なコトバたちに、

たくさん出会えますように。

 

一覧にもどる